電動キックボードの実用性と災害時の活用可能性
近年、コロナ禍の三密対策として自転車やバイクなどの「マイクロモビリティ[1]」が注目されている。特に最近は、環境対策からモビリティの電動化も相まって、公道が走行可能な電動キックボードの話題を耳にすることが増えた。また、4月23日からは経済産業省が産業競争力強化法に基づき、電動キックボードの特例措置での走行を認めるなど、次世代の乗り物として注目を浴びている。今回は、電動キックボードの移動手段としての実用性及び、その特徴を活かした災害時の活用可能性について検討する。
[1]自動車よりもコンパクトで小回りが利き、環境性能に優れ、地域の手軽な移動手段となる1〜2人乗り程度の車両のこと。(国土交通省,https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_fr1_000043.html)
電動キックボードとは
⑴道路交通法
電動キックボードは、その大きさや出力から、道路交通法において原動機付自動車に分類される。また、車道で走行させる場合、原動機付自転車に求められる道路運送車両の保安基準の要件に適合させる必要がある(ただし、最高速度20km/h未満のものにあっては、一定の保安装置の装備が不要となる)。
〜ルール概要〜
・車道走行
・運転免許所持
・ヘルメットの着用義務
・法定速度20km/h
⑵産業競争力強化法に基づく「新事業特例制度[2]」
現状の法律の扱いだと、電動キックボードの普及は難しいということから、令和3年4月23日付で認定を受けた4つの事業者については、規制緩和の特例措置が適用された。
〜ルール概要〜
・ヘルメットの着用は任意
・普通自転車専用通行帯の走行を認める
・「一方通行、ただし自転車を除く」となっている道路で自転車同様に双方走行(いわゆる逆走)を認める
・法定速度15km/h
[2]新事業活動を行おうとする事業者が、その支障となる規制の特例措置を提案し、安全性等の確保を条件として、具体的な事業計画に即して、規制の特例措置の適用を認める制度。(参照:経産省Webサイトhttps://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/kyousouryoku_kyouka/shinjigyo-kaitakuseidosuishin/result/shinjigyou.html)
公道走行可能な電動キックボードアイテム比較
exs1 エクスワン 価格:43,890円
モーター定格出力:350W
耐荷重 :120kg
充電時間 :3-5時間
重量 :13.5kg
速度 :最大速度 25km/h
走行モード :2段階切り替え
サイズ(通常時) :長さ1080mm×幅430mm(ハンドル幅)×高さ1310mm(ミラー含む)
サイズ(折り畳み時):長さ1,080mm幅43mm高さ48mm
最大航続距離 :18-25km
ブレーキシステム:前輪
(電子ブレーキ)
後輪
(ディスクブレーキ)
搭載バッテリー :36V7.5AH
タイヤ :8.5インチ
exs2 エクスツー 価格:76,890円
モーター定格出力:500W
耐荷重 :120kg
充電時間 :5-7時間
重量 :23.5kg
速度 :最大速度 35km/h
走行モード :3段階切り替え
サイズ(通常時) :長さ1200×幅600×高さ1160
サイズ(折り畳み時):長さ1,200×幅600×高さ390
最大航続距離 :35-40km
ブレーキシステム:前後(ディスクブレーキ)
搭載バッテリー :48V12.5AH
タイヤ :10インチ
E-KON grande PLUS 価格:116,600円
モーター定格出力:500W
耐荷重 :約120kg
充電時間 :7-8時間
サイズ :1210×200×670mm
重量 :約22.5kg
最大速度 :38km/h
最大航続距離 :約50km
ブレーキシステム:両輪ディスクブレーキ
バッテリー電圧 :48V
バッテリー容量 :20Ah
バッテリー :リチウムイオン
タイヤサイズ :前後10インチ
BLAZEブレイズEV 価格:149,600円
航続距離 :35km
定格出力 :350w
最大速度 :30km
充電時間 :約3.5h
防水(規定値):本体IP54 / 配線IP67
サイズ :1170mm×580mm×1000mm
総重量 :24.8kg
最大出力 :476W
ブレーキ形式 :前後輪ディスク
タイヤサイズ :10×2.5
最大積載量 :120kg
スナメリ(Sunameri) 価格:420,000円
サイズ:L1100mm W560mm T1200m
(折り畳み時の高さ 380mm)
モーター :48V16ah
重さ :23kg
最高速度 :50km/h
最高航続距離 :最大40km
(体重や運転状況による)
ブレーキ :前後ディスク
サスペンション:カーボンリーフサスペンション
フレーム :カーボンモノコック
上記アイテム比較を含め日本笑顔プロジェクトメンバーが、多くの電動キックボードをリサーチし今回はeXs2(エクスツー)を購入し、実証実験を行ってみました。今度も、アイテムを増やし実証実験を行ってみたいと思います。
実証:電動キックボード:eXs2(エクスツー)
場所:長野県中野市〜長野県小布施町(9.6km) 時間:朝8時30分~
環境(道の特徴) | 気になる点 |
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出発〜3km ・車通り:かなり多い ・道幅:やや広い ・歩道:あり ・その他:信号が多い | ・めちゃめちゃ見られる ・右折が怖い ・渋滞を引き起こす(歩道に入れない) ・発進が焦る(特に信号が青になったとき) |
3km〜5km ・車通り:やや少ない ・道幅:やや広い ・歩道:あり ・その他:直線が長い | ・車に追い越されるのが怖い (車の速度が速いため) ・右折がより怖い |
5km〜7km ・車通り:少ない ・道幅:狭い ・歩道:なし ・その他:カーブ、凸凹多い | ・自転車と接触しそうになる ・段差がない場所を通る必要性 ・車から確認しづらい |
8km ・車通り:少ない | ・坂が急すぎると、かなり減速する |
〜10km ・道幅:狭い ・歩道:なし ・その他:緩やかな登り坂 | ・立ちっぱなしがきつくなってくる |
結果
実際に活用して分かったメリットとデメリット
①メリット
・価格が安い
・コンパクトで持ち運びができる(下記写真)
・密にならない移動手段
・公道を堂々走れる
・乗るのが楽しい
・小回りが効く
・燃費が良い(約10km走ってもバッテリーは満タン状態)
・風が気持ちいい
・誰でも簡単に操作できる
②デメリット
・荷物が載らない
・鍵がない(盗まれる可能性)
・速度制限による車渋滞のリスク
・周りから注目される(メリットでもある)
・車との距離が近い
・右折にスキルが必要
・ウインカーを切り忘れる(音がない、自分からは見えない)
・クラクション音が小さい
・段差や障害物に弱い
・両手が使えない
・立ちっぱなし
●考察
・公道の移動手段
原動機付き自動車と同じ法律区分であるが、法定速度は20km(原付よりも遅い)ということで、渋滞を引き起こしやすい。首都圏や国道等の、交通量の多い道での走行には適していない。また、立ちっぱなしによる疲労や、それに伴う集中力の低下、バッテリーの消費等、長距離になればなるほど転倒や事故のリスクも増えるため、中長距離の移動手段としては適していないように思われる
車での持ち運びができる点や、運転の簡易性・利便性を考慮すると、ちょっとした移動手段やラストワンマイルモビリティとしては非常に有効な手段であると考えられる。ただ、安全性に関しては、保安基準等に懸念材料が残る。
・災害時の活用
コンパクトで持ち運びができるため、被災地への移送が簡単である。また、小回りが効くため、狭い道の移動や避難所間の短い距離の移動での活用が想定される。車やバイクで必要とされるガソリン供給が難しい状況においては、車や発電機等からの充電対応の点から有効である。ただ災害時は土砂や瓦礫で塞がれ、道としての機能を失っている場合も多い。電動キックボードは、オフロードタイヤを履いた状態であっても、発災直後や整備されていない道路でハンドルを取られる可能性があることから、段差や障害物に弱く、実際の活用としてはまだ課題が残る。